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電子商取引に詳しくなる解説教材

購入者が受取確認をしてくれない
購入者が受取確認をしてくれない

Aさんは、フリマアプリに出品した商品が売れたので、購入者が入金したことを確認した上で商品を発送しました。商品の発送の際、追跡番号の付いた配送方法にしていたので、購入者には数日前に商品が届いていることは、配送業者のウェブサイトで確認済みです。

ところが、数日経っても、この購入者は受取確認をしてくれません。購入者に問い合わせのメッセージを送りますが、さらに数日経っても、この購入者は受取確認をせず、Aさんが送ったメッセージへの返信もしてくれません。

結局、2週間ほど経過した後、フリマアプリ運営会社のシステムが、この購入者が受取確認をしたものとみなして、取引は完了となりました。取引が完了となったので、エスクローサービスを通じて運営会社が預かっていた商品代金を、Aさんは手にすることができるようになりました。しかし、この購入者がもっと早くに受取確認をしてくれれば、Aさんはもっと早くに商品代金を手にすることができました。また、Aさんは、「ちゃんと購入者は受け取ったのだろうか?途中で商品が破損してはいないだろうか?」といった不安な思いを抱えながら、2週間も待たされ続けたことに、不満を感じました。

対策のポイント

ネット通販サイトは、ほとんどの場合、売り手は業者となります。中には悪質な業者もいるでしょうが、一般に、ある程度の量・回数の売買を繰り返すことで、利ざやを稼ぐことを生業(なりわい)としていますから、買い手に「次に似たような商品を買う時も、またこの業者から買おう」と思ってもらいたいと考える業者も多いでしょう。したがって、大抵の場合は、売り手である業者は約束通りの商品を適切な配送方法を用いて買い手に届けるものと期待されます。

これに対し、フリマアプリやネットオークションでは、売り手が業者ではなく個人という場合も多いです。中には、出品は一回きりで、次に出品する予定はないという個人が売り手になっている場合もあるでしょう。このような個人の中には、取引ということに慣れていない、あるいは、商品知識に乏しい、売れてお金が入りさえすれば買い手からどう評価されようが気にしないといった人もいるかもしれません。この点が、ネット通販とは事情が異なるところです。

フリマアプリやネットオークションでは、ネット通販とは異なり、荷物を受け取った買い手が中身を確認して、「受取確認」のボタンを押さないと取引が完了しない仕組みになっている場合が多いですが、その背景には、こうした事情があるものと考えられます。

ただし、フリマアプリやネットオークションに参加している人の全てが、こうした事情を念頭に入れているとは限りませんし、参加者にはベテランもいれば初心者もいます。ネット通販と同じような感覚で、商品を受け取った後、受取確認をしないままに放置してしまうような購入者も中にはいるようです。

こうしたことに対応するため、フリマアプリやネットオークションの運営会社では、購入者が受取確認をしないままに一定の期間(例えば2週間)が経過した場合には、購入者が受取確認をしたとみなすようにしている場合が多いようです。こうすることで、商品代金が売り手に渡るようにしています。とはいえ、購入者が商品受け取り後にきちんと受取確認をしてくれたら、売り手が不安な気持ちを抱きながら待ち続けるということはなかったわけですから、購入者が受取確認をせずに放置するということは問題といえます。

ちなみに、このように待たされた経験がある出品者の中には、次回から出品する際に、「商品を受け取ったらすぐに受取確認をしてくれる人を希望する」といったことを商品説明に書く人もいるようです。

他人の撮影した商品写真を流用したら
他人の撮影した商品写真を流用したら

Aさんは、勉学に専念するために、ゲーム機をフリマアプリに出品することにしました。ゲームをプレイする上で特に問題が生じるような不具合はないため、「新品同様」と商品説明に書き込みました。そして、商品写真には、ゲーム機を製造販売するメーカーのウェブサイトに掲載されている写真を使用しました。

このゲーム機は、販売時期により型番が変わり、本体の形状が少しずつ変化しているので、Aさんは間違えのないように、自分が出品するゲーム機の型番を注意深く確認して、同じ型番の商品写真をメーカーのウェブサイトから探し出して使用するようにするなど、細心の注意を払いました。他方、手元にあるゲームの実物の写真については、撮影・掲載しませんでした。

出品してしばらく経つと、あるユーザーから、「この写真はメーカーのウェブサイトに掲載されている写真を盗用したものではないか?このような出品の仕方は不適切だ」との指摘を受けてしまいました。

対策のポイント

自分では「新品同様」のつもりでも、他人が見れば、キズや汚れ、使用感があると見える場合があります。”感じ方”は人それぞれ違うので、フリマアプリやネットオークションでは、文字だけでなく写真も使って商品の説明をするようになっています。しかし、出品する実物の写真を掲載せずに別の写真を使えば、買い手は商品の実物の状態を誤って認識することになります。このため、メインの商品写真には、出品する商品の実物の写真を掲載すべきです。

他人が撮影した写真を商品写真に使うことについては、商品の実物が分からなくなってしまうという問題のほか、著作権という問題もあります。写真には著作権があり、撮影者か、撮影者から著作権を譲渡された者が権利を有しています。この権利者に無断で写真を利用すれば、著作権を侵害してしまうおそれがあります。

ただし、権利者の許諾を得ないで他人の写真を使用しても、著作権を侵害しないとされる場合があります。著作権法は、「引用」という形で他人の著作物を使用することを認めています。合法的な「引用」として認められるためには、幾つかの条件があり、「主従関係が明確であること(明確性)」「引用部分が他とはっきり区別されていること(明瞭区別性)」「引用する必要性があること(必要性)」「出典元が明記されていること(出典)」「改変しないこと」といった条件を満たさなければいけません。

とはいえ、実際にどのような形であれば合法的な「引用」として認められるのかという具体的な判断については、難しい部分もあります。したがって、他人が撮影した写真を使用するのは、どうしても必要な場合以外は避けるのが無難であると考えられます。また、他人が撮影した写真を使用する場合も、自分で実物を撮影した写真があくまでメインとし、他人が撮影した写真を補助的に使うという形にすることが適切だと考えられます。他のユーザーがやっているから自分も真似するというのは、適切と言えません。

報復評価された
報復評価された

Aさんは、フリマアプリで商品を購入しましたが、商品を受け取ってみると、商品説明や説明写真にはなかったキズや汚れがありました。Aさんはすぐに出品者に返品に応じるようにメッセージをしましたが、出品者はかなり日数が経過してから、ようやく返品に応じました。また、出品者は、「中古品なのだから、キズや汚れはあって当然で、わざわざ書く必要はない。返品を要求するのは購入者の我儘だ」というメッセージを送りつけてきました。

不快に思ったAさんは、今後、別のユーザーの参考になるようにと考えて、この出品者に「非常に悪い」という評価を付けることにしました。

翌日、フリマアプリを使用してみると、この出品者がAさんに対して「非常に悪い」という評価を付けていることを発見しました。Aさんは、自分は何も悪いことをしていないのに、なぜこのような評価を受けたのだろうかと不快に思いました。

対策のポイント

取引相手から悪い評価を付けられて不快に思った人が、自分がその相手を評価する際に、悪い評価を付け返すということもあるようです。こうしたことを、「報復評価」と呼ぶ人もいます。報復評価は、それが良いか悪いかは別として、そうしたことをする人がいるという声は聞かれます。

また、こうした報復評価を受けることを避けるために、取引相手の評価を付ける際に気を付けているという人もいるようです。例えば、悪質な取引相手だと思っても、あえて「非常に悪い」とか「悪い」という評価を付けないとか、相手を批判・非難する内容は自由記述式のコメントに書き込むといった人もいるようです。

このように、フリアアプリやネットオークションの評価のシステムは、評価を付ける側が必ずしも適正な評価を付けているとは限らないという意味で、絶対的なものではないと言えるでしょう。

ただし、このような不適切・不誠実な評価を付ける参加者が少数にとどまり、大勢の参加者が誠実に評価を付けているのであれば、全体としては、評価のシステムは一定程度の信頼性があるものと考えることができるでしょう。

商品確認前の受取確認
商品確認前の受取確認

Aさんはネットオークションで商品を落札した。
商品が配送されたが、時間が無かったので実際に商品を確認しないまま、出品者に受取確認をしてしまった。
後になって開封して商品の状態を確認したところ、オークションページの説明には記載されていなかったキズがあることが分かった。
Aさんは、出品者にクレームをつけることができるのだろうか?

対策のポイント

店頭で品物を購入するときは事前に商品の状態を確認することができますが、電子商取引では、オンラインで購入した商品が手元に届き、状態を確認したら売り手側の問題で商品に不備があるのでクレームをつけたい、ということが考えられます。

こうした場合に民法の新法では、買い手は売買を無かった事にして返金してもらう、商品を完全なものに交換してもらう、商品の価格を値引きしてもらう、という要求が可能となっています。それでは実際の電子商取引で、クレームによりそれらの手段が実行できるのかというと、そんなことはありません。大手ECサイトでは、出品者が業者なので商品を完全なものに交換してもらえることがありますが、ネットオークションやフリマアプリは基本は個人が中古品を出品しているため交換は難しく、いと考えられます。

それでは商品に不備があった場合、いつまでクレームが付けられるのでしょうか?

フリマアプリやネットオークションでは、買い手が商品の受取確認をすると支払い手続きが進んでしまうので、一般的には、商品のクレームを付けるなら受取確認をする前と考えられています。

このケースではAさんは受取確認をしているので、ネットオークションを通してクレームを付けるのは難しいでしょう。なお、直接売り手に対して訴訟などの法的手段に訴えることは理論的に可能ですが、手間も費用もかかりますので、商品の価値と比較するとそうした方法を選ばない方が多いと思われます。

高額転売
高額転売

2019年12月、Aさんは、翌年の冬から春にかけて必要なものをまとめ買いしました。花粉対策のためにマスクもたくさん買いましたが、ちょっとした手違いで、買い過ぎてしまいました。

2020年1月に入ると、中国で新型コロナウィルスの感染者が確認されたことが大きな話題となり、中国人の日本への入国を制限すべきだといった議論が出ると同時に、いつ日本国内で感染者が出てもおかしくないという議論も活発になりました。1月末には、感染予防のため、日本国内でも薬局でマスクが品薄状態となり、マスクが入手できないと困るといった声も囁かれるようになった。

Aさんは、困っている人を助けたいという思いから、買い過ぎて余っているマスクをネットオークションに出品することにしました。開始価格は、前年12月に購入した時の値段にネットオークション運営会社に払う出品手数料を上乗せした金額に設定しました。

数日後、Aさんが自分のオークションを確認すると、現在価格は開始価格の10倍近くに暴騰していることを知りました。そして、多くのユーザーからメッセージが届いており、「悪徳業者」「不見識」「恥を知れ」といった内容も数多くあることを知りました。また、その数時間後、Aさんには運営会社から「事情を聞かせてほしい」と連絡が入りました。

Aさんは、困っている人のためと思ってやったことなのに、多くのユーザーから非難されたり、運営会社から疑いの目で見られたりしたことで、とても悲しい気持ちになりました。

対策のポイント

これは、誰が悪者かということを一概に決められない事例と言えるかもしれません。

大前提として、フリマアプリやネットオークションでは、取引相手の顔は見えませんので、どんな人がどんな意図で売買しようとしているのかは分かりません。また、ネットオークションは、フリマアプリとは異なり、最終的な落札金額は出品者が決めるわけではないので、出品者も実際にいくらで売れるのかは不明です。

この事例の場合、Aさんは開始価格を決めただけで、その後の価格の暴騰は、どこかの誰かが高値で入札をした結果です。Aさんが、高額転売を目論んでいたわけではありません。しかし、暴騰した価格で落札ということになれば、結果的に、Aさんは購入金額を遥かに上回る金額で転売することになります。

現在価格を見て、これはマスクの高額転売に該当する事例にあたると考えた多くのユーザーが、Aさんを非難するメッセージを送ってきた気持ちも、理解できるところはあります。Aさんが善意で出品したのか、高額転売を狙って出品したのかは、他のユーザーの目からは区別することが難しいからです。

この事例から学ぶ教訓としては、マスクのように通常時には出品禁止物に指定されていない物であっても、状況によっては出品禁止物または出品することが道義的に批判の対象となり得るということです。また、相手の顔が見えない電子商取引では、”善意”のような気持ちを表現して相手に伝えることは、簡単ではないということです。

フリマアプリ依存
フリマアプリ依存

Aさんは、フリマアプリに出品した商品が売れて嬉しくなり、次々と出品するようになった。そのうちにフリマで売るのがやめられなくなり、送料などの経費が回収できなくても構わず出品を繰り返すようになった。

Bさんはネットオークションで入札価格を競り合うのが面白くなり、入札価格の動きが気になって、人と話すときでもスマホの画面ばかり見ていて会話にならないと嫌われている。

対策のポイント

「依存症」というのは本来は医学用語ですが、厚労省による定義では「特定の物質や行為・過程に対して、やめたくても、やめられないほどほどにできない状態をいわゆる依存症」として説明されています。フリマアプリで売るのがやめられない状態は、この「いわゆる依存症」にあたると思われます。

こうしたフリマアプリ依存症(と予備軍)は、次第に増えていると考えられます。

取引評価の悪用
取引評価の悪用

ネットオークションを利用しているAさんは、過去に悪質な相手と取引した経験から、自分のオークションに、悪質なユーザーが参加してほしくないと考えるようになりました。ネットオークションの利用の手引を確認すると、携帯電話等で本人認証がとれていないユーザーがオークションに参加できないようにする「入札者認証制限」という機能や、過去に多くの取引相手から「悪い」という評価を付けられているユーザーがオークションに参加できないようにする「入札者評価制限」という機能があることが分かりました。

Aさんは、これらの機能の両方を利用して、オークションを開催しました。オークションは無事に終了したように見えましたが、落札者となった取引相手と実際にメッセージのやり取りをしてみると、悪質な相手で、非常に不快な思いをすることになりました。

対策のポイント

「入札者認証制限」や「入札者評価制限」は便利な機能であり、こうした機能を利用すると、入札できるユーザーが限定される反面、悪質なユーザーが落札者となってしまう確率は下がるものと考えられます。

ただし、悪質なユーザーが落札者となってしまうリスクは完全にゼロになるとは言えないようです。もし、悪質なユーザーが用意周到に準備する場合には、入札者認証制限や入札者評価制限をすり抜けてしまう可能性があります。

例えば、もともと使用しているIDとは別に新しいIDを取得しようとした時、携帯電話のSIMが複数あれば、複数の本人認証されたIDを取得することも、技術的には可能でしょう。また、もともと使用しているIDに「非常に悪い」という評価がたくさん付いてしまった場合は、新しいIDを取り直すことで、そうした悪い評価が付いていないIDを使って取引をすることが、技術的には可能でしょう。このような行為は適正であるとは考えられませんが、技術的に不可能かと問われれば、不可能とは言い難いところがあります。

このように、いわば取引評価を偽装し、悪用するというユーザーがいる可能性は、ゼロではありません。したがって、「入札者認証制限」や「入札者評価制限」は、リスクをゼロにするための手段というよりは、こうしたリスクが起こる確率を下げるものであると考えられます。

オークションで吊上げられた
オークションで吊上げられた

Aさんは、あるネットオークションに入札しようとしています。現在価格は2000円で、終了までには数日間あります。Aさんは、相場を考えると、だいたい3000円くらいで落札できるだろうし、それくらいなら買いたいと考えました。ただ、もしも別のユーザーが3100円とか3200円とかで落札するということになったら悔しいので、3000円を少しオーバーしても構わないとも思っています。

Aさんは、自分が使用しているネットオークション運営会社の入札の仕組みを調べたところ、全ての入札が「自動入札」という仕組みで行われていることを知りました。このオークションの場合、もし、Aさんが「3000」円という数値を入力して入札ボタンを押すと、次の瞬間に、Aさんが2100円でこのオークションに入札することになります。この後、別のユーザーが例えば2300円で入札すれば、Aさんが何の操作をしなくても、この自動入札の機能が代行して、2400円という値段で入札してくれます。もし、別のユーザーが2600円で入札すれば、自動入札の機能が代行して、2700円で入札してくれます。ただし、誰かが3000円で入札してきた場合は、それよりも高い値段で入札することはないです。

Aさんは、この自動入札の機能は、便利だと思いました。例えば、別のユーザーが2500円といった値段しか付けなければ、2600円で落札できるし、もし別のユーザーが2900円といった値段を付けた場合は、3000円で落札できるからです。他方、3000円を1円でも上回る値段になってしまうと入札しないことになるので、少し高めの金額を入力することにしました。とりあえず、「5000」円と入力して、待つことにしました。

Aさんは、オークションが終了する前日に、一度、状況を確認してみることにしました。すると、現在価格は5100円となっており、別のユーザーが最高額入札者となっていることを知りました。Aさんは、落札できずに残念と思いつつも、5100円という値段は高すぎるし、数日前に自分で入力した「5000」円という値段も、いま考え直してみれば高すぎると思いました。もし5000円で落札できてしまったら、逆に後悔したかもしれないと思いながら、オークションのページを閉じました。

翌日、Aさんは、ネットオークションからメッセージが届いていることを確認しました。それを見ると、Aさんが5000円で最高額入札者となったので、5000円を入金するよう請求されていました。Aさんは、5000円では高すぎると思うと同時に、なぜ別のユーザーが5100円で入札しているのに、自分が5000円で落札者となったのか不思議に思いました。

対策のポイント

このトラブル事例は、某ネットオークションが提供する機能の幾つかを悪用したものと言えます。順次、説明していきます。

オークションでは、一度出品者が出品をしたら、その取消しはできないし、一度入札者が入札したら、その取消しはできないというのが原則となります。

ただし、某大手ネットオークションの場合には、例外も存在します。出品者側は、開催中のオークションを取消したり、自分のオークションでなされた特定の入札を取消したりすることができます。開催中のオークションを取消す場合には、手数料がかかるようです。そして、特定の入札を取消す場合には、手数料はかからないようですが、あくまでこうした行為は例外的な行為と言えます。特定の入札を取消した場合には、入札者か出品者のどちらかに必ず「悪い」評価が付くシステムとなっているようです。

ところで、自動入札は、一度値段を付けてしまえば自動で入札を繰り返してくれるので、ずっとオークションの画面を凝視しておく必要はなく、オークション終了時に自分が入力した値段以下で落札されたか否かを確認しに行けばよいので、手間が省ける機能といえます。また、オークションでライバルと競って熱くなっていくうちに、ついつい予算をオーバーした金額を入力してしまうということもあるかもしれませんが、ライバルと競っている様子を凝視しないようにすれば、熱くなることもないのかもしれません。

さて、ここで、「1円でも多くの額を落札者から搾り取ってやろう」と考える出品者がいたとします。この出品者はネットオークションの仕組みを熟知しており、その仕組みを巧みに利用しようとしています。この出品者は、自分が使っているIDとは別のIDをダミーで作成します。そして、オークションの途中で、このダミーのIDを使って、自分が開催しているオークションに入札をしていきます。その際、入札価格には、現在価格を少し上回る金額からスタートして、徐々に金額を高くしていきます。

例えば、ここで紹介した事例だと、現在価格2000円の時にAさんが5000円と入力したことで、現在価格は瞬時に2100円となります。この後、誰も入札者が現れなければ、2100円でAさんが落札となります。この時点で、出品者がダミーのIDで2200円と入力して入札すれば、次の瞬間に、自動入札の仕組みが作動して、現在価格は2300円でAさんが最高額入札者となります。次に出品者がダミーのIDで2400円と入力すれば、今度は現在価格が2500円でAさんが最高額入札者となります。この作業を繰り返していくと、出品者がダミーのIDで4900円と入力すると、次の瞬間に現在価格が5000円でAさんが最高額入札者となります。ところが、このあと出品者がダミーのIDで5100円と入力すると、現在価格は5100円でダミーのIDが最高額入札者となります。

この段階で、出品者は、誰かが5000円と入力して入札していることが分かります。ここで、出品者は、このダミーのIDの入札を、「入札者都合で取消」を選択した上で取消します。すると、ダミーのIDに「悪い」評価が付くことにはなりますが、ダミーの5100円という入札は取消されて、次点となるAさんの5000円という入札が最高額入札ということになります。このような行為を通じて、この出品者は「1円でも多くの額を落札者から搾り取ってやろう」としているわけです。

自動入札は、入力した金額よりも低い金額で落札できることもある反面、入力した金額ちょうどで落札ということになる場合もあります。もちろん、ちょうどの金額で落札の場合には、その金額を支払うことになります。入札する金額を決めるときは、こうしたことにも注意するようにしましょう。

もちろん、ダミーのIDを取得するというのは適切な行為とは言い難いでしょうが、こうしたことが技術的に不可能なのかと問われれば、不可能とは言い難いでしょう。

突然出品停止になった
アカウント停止

Aさんは身の回りのものを整理して、大量にフリマアプリに出品することにした。親に頼まれて、家の不用品も多数出品した。
すると、突然アカウントが停止されていることに気付いた。
出品禁止物のような、公式ルールで制限されているものは出品していない。
なぜアカウントが停止されてしまったのだろうか?

対策のポイント

フリマアプリでは、出品者は個人であることという公式ルールで運用されていることが多いようです。そのため、Aさんのように一度に大量の商品を出品したり、同じ商品を繰り返し出品していると、運営から業者ではないかと疑われて、アカウントを停止させられることがあります。

法律的には、取引の相手が個人であるか業者であるかによって効果が変わることはありませんが、サービスによって、公式ルールで業者とみなされた場合は制限を受けると定められている場合があるので注意が必要です。ただし、こうした制限は状況によって変更される可能性も高いので、サービスの利用前に公式ルールを確認するようにしましょう。

なおネットオークションでは、公式ルールで業者の出品を認めていることがあります。この場合は、一度に大量の商品を出品したからといってアカウントが停止されることはありません。

送料が超高額だった
高額の送料

Aさんは大手のネットショッピングサイトでボトル入り飲料を購入しようと探していた。
ある出品者が最安値で出品していたので、そこで購入することを決めた。
購入手続きを進めていたが、通常は1000円程度の配送料が10万円と設定されていることに気付いた。

対策のポイント

主にネットショッピングで多発して問題となっているのが、配送料を普通ではありえない高額に設定した商品の問題です。なかには、数10万円に設定された例もあるようです。

つい商品価格にばかり気をとられてしまい、まさか配送料が高額に設定されていることに気付かず、うっかり決済してしまったというトラブルが報告されています。

電子商取引で品物を購入する場合は、商品価格だけでなく、それ以外に発生する費用も確認するようにしましょう。

落札商品の在庫が無いとキャンセルされた
落札商品の在庫が無いとキャンセルされた

Aさんはネットオークションで商品を落札した。
ところが、出品者より「落札された商品は在庫が切れているため、取引はキャンセルします」との連絡があった。手元に無い商品をネットオークションに出品して良いの?

対策のポイント

売り手が商品の在庫を持たずに販売することを「無在庫販売」と呼びます。売り手は、買い手の注文を受けてから商品を確保しますので、商品が確実に売れると同時に在庫を抱えることがないので、売り手からするとリスクを抱えず確実に取引できるというメリットがあります。

全ての電子商取引で、こうした「無在庫販売」が認められているわけではありません。フリマアプリやネットオークションでは、公式ルール(規約)によって、売り手が手元に商品を持たないで出品することを禁止しています。ところが、フリマアプリやネットオークションの取引件数の急増に伴って運営のチェックが行き届かないこともあり、禁止されている無在庫販売を行うユーザーも増えています。

無在庫販売の問題は、出品者(=売り手)が実際の商品の状態を確認せずに出品しているため、商品の状態が商品説明と大きく異なることがあります。また、このケースのように、落札されても実際に商品が確保できないのでキャンセルされるということもあります。

無在庫販売なのかどうかを判断する目安として、商品の発送地があります。商品発送地が海外の場合、海外の製造業者から商品が買い手に直送されることになります。この場合、買い手が売り手に提供した商品の送付先の住所・氏名などの個人情報が、海外の業者に無断で提供されることになります。

また、無在庫販売は原則禁止ですので、取引の最中でも運営から取引停止処分を受けることも考えられます。

以上をまとめますと、売り手が手元に無い商品をネットオークションに出品するのは原則禁止されているが、それを無視して出品しているユーザーも存在する。無在庫販売は買い手にはリスクが高いので、利用しない方が安心ということになります。

「●●様専用」と書かれた商品を購入したらクレームを受けた
「●●様専用」と書かれた商品を購入したらクレームを受けた

Aさんは、フリマアプリに欲しい商品を見つけた。商品名に「〇〇様専用」と記されていたが、どうしても欲しい商品だったので、購入ボタンを押して、代金の支払い手続きも済ませた。
すると、この商品の出品者からメッセージが来て、「この商品をあなたに売ることはできません。「〇〇様専用」という表示を読まなかったのですか」と指摘された。
このあと、Aさんがフリマアプリの利用規約を確認すると、特定のユーザーのみに販売する意図した出品をしてはいけない旨が定められていることが分かった。Aさんは、この出品が利用規約に違反するのではないかと考えた。

対策のポイント

利用規約に特定のユーザーのみに販売する意図した出品をしてはいけない旨を定めているフリマアプリは、実在します。

もし、出品者にメッセージを送り、「購入したのだから、早急に商品を発送してください。特定のユーザーのみしか販売しないというのは、利用規約に違反します」と伝えたら、どうなるでしょうか?

このとき、出品者が利用規約のことをもともと知らなくて、Aさんのメッセージを見てそれに気付いて、Aさんの要求通りに早急に商品を発送してくれるかもしれません。ただ、出品者が利用規約のことを知った上で、あえて利用規約に違反することをしていたら、どうなるでしょうか?メッセージを送っても、早急に商品を発送してくれないかもしれません。

さて、Aさんが支払い手続きを済ませた商品代金については、エスクローサービスを通じて運営会社の手元にあります。ですが、商品については出品者の手元にあるので、運営会社の手元にはありません。ですから、仮に運営会社がこの出品者に早急に商品を発送するようにという連絡を入れたとしても、出品者が頑なに拒絶したら、結果として商品は送られてこないということになります。

このように、商品の実物は出品者の手元にあるため、出品者が発送してくれないことには、購入者が商品を入手するのは困難と言えるでしょう。視点を変えれば、利用規約に違反している可能性がある出品者は、問題のあるユーザーだと言うことができ、問題のあるユーザーと関わりを持てば、取引する上で問題が生じるかもしれないとも言えるかもしれません。

出品者と揉めたり出品者が問題行動に悩まされたりしたくないというのであれば、「〇〇様専用」という出品をしている出品者とは、関わりを持たないようにするという考え方もあるでしょう。