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未成年者の取引

1.物の売買とは?法律の視点から

日常的な言葉でも、「売買」という言葉を使うことがありますが、民法という法律に、この売買の規定があります。売り手が商品を買い手に引き渡すことを約束し、これに対し買い手が、その代金を支払う約束をすることだと規定しています。また、売り手と買い手のそれぞれの思いが合致(合意)することを、契約の成立といい、これらをあわせて「売買契約の成立」となります。

売買契約が成立したということは、買い手は完全な商品を受け取る権利と、売り手は代金を受け取る権利を得ますが、一方で、それぞれが義務も果たす約束が成立したともいえます。この約束を果たすことを義務の履行といいます。売り手は商品を引き渡す履行義務を負い、買い手は代金を支払う履行義務を負うということになります。

2.未成年者と成年者の取引の法律上の効果の違い

市民生活を規律する民法では、物を売ったり、買ったりする約束のことを売買契約としています。そして、売買契約を締結するという行為は法律行為です。成年者(20歳以上)は、基本的に法律行為を自分一人で行えますから、売買契約も一人で結べます。一方、未成年者(20歳未満)は、法律行為を制限するという意味で、制限行為能力者として、法律行為に一定の制限が設けられて保護されています。

つまり、未成年者は、保護者等から許されたお小遣い程度の買い物以外は、自分一人だけでは売買契約に基づく契約が確定的には成立しません。正確にいうと、買ってもあとから取り消すことができると規定しているのです。ただ、保護者の同意があれば完全な形で買うという行為を、確定的に成立させることが可能になります。
メルカリの利用規約を例にとれば、15歳以上であって、事前に保護者等の法定代理人の同意を得ることにより、フリマアプリ内では、買い手としての利用資格を充足する状況を備えたこととしています。

たとえば、3歳児も未成年者ですが、自分で何を買いたいのかをうまく表現できず、すぐに気が変わったりしますが、一般的に15歳以上になれば、自分の意思で買い物ができるので、これに保護者等が同意を与えて、売買契約を成立させています。

3.未成年者保護の視点と、取引の取り消し

20歳になっていない者(人)を未成年者といいます。たとえ自分で意思表示ができたとしても、一般的に成年者に比べて人生経験がまだ浅く、だまされやすいなど、判断能力が不完全と考えられているため、自由に契約を結ぶことができる行為能力者と区別しています。ですから、売買などの法律行為を行うときには、制限行為能力者として制限を受けることになります。また、父母の親権に服さなければ(言うことを聞かなければ)なりません。

売買契約を含め、契約は法律行為とされ、これには法律上の行為能力が必要とされているのです。また、成年者であっても、お年寄りのなかなどには、やはり法令で保護しなければならない方がいて、その場合にも制限行為能力者として扱います。

このように制限行為能力者である未成年者がした売買契約は、あとから親権者である父母が取り消すことができますし、本人も親権者の同意なしに取り消すことができます。

売り手として、その法律行為を取り消されることなく、確定的に契約を有効に成立させるためには、事前に親権者の同意を得ておくことが必要です。ほとんどのフリマアプリで、未成年者に親権者(保護者等)の同意を求めているのはこのためです。

4.買い手が成年の場合・未成年の場合で異なるのか

商品の買い手が未成年の場合、未成年者が単独で結んだ契約は、未成年者の保護のために、いつでも取り消されてしまいます。ただ、ネットオークションやフリマアプリの利用規約により、利用者登録時に未成年者の行為について親権者の同意がなされ、この同意により未成年者の契約であっても取り消せないことになっています。

よって、ネットオークションやフリマアプリの場面では、結果的には成年であっても、未成年であっても契約効果には影響を与えないことになります。

5.なぜ成年年齢が引き下げられるのか

日本では明治9年以来、成年は20歳とされてきましたが、国会や地方公共団体の議会の議員選挙などを規定する公職選挙法の選挙権年齢が18歳とされ、契約の方法などを規定する現行民法においても、18歳以上の人を成年とするのが適当ではないかという議論(話し合い)がされるようになりました。世界的にも成年年齢を18歳とする国が主流で、これは若者の自己決定権(国などの公権力を受けずに自ら決定する権利)を尊重し、積極的な社会参加を促すことになると考えられるようになったからです。

現行民法では、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合は、原則として、契約を取り消すことができるとされ、この未成年者取消権は未成年者を保護し、未成年者の消費者被害を抑止する役割をはたしてきました。

ただ、この民法の規定も、令和4年4月1日からは成年年齢を18歳とすることが決まっています。成年を18歳に引き下げた場合、18歳から19歳の人は、契約時に親権者の同意が必要なくなりますが、一方で、未成年者取消権を行使することができなくなるため、消費者トラブルに巻き込まれることが懸念(心配)されています。

これに対し国は、小・中・高等学校等での消費者教育の充実や、消費者被害を救済するために消費者契約法という消費者を保護する法律の改正を行うなど、環境整備に取り組んでいくようです。まずは単独で契約を締結できるという重みを自覚する必要があるでしょう。

【編集者注記】成年年齢を18歳とする改正民法が2022年4月1日から施行されて、2022年4月1日以降は成年年齢は18歳となりました。

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