売買契約が成立した場合、その契約の内容に従って、買い手(注文者)は売り手(メルカリでは出品者)に商品代金の支払いをし、売り手は商品を買い手に引き渡す義務があります。これを行うことを義務の履行といいますが、売り手が買い手に、完全な商品を引き渡すという履行義務があるにもかかわらず、その商品に隠れたキズがあって不完全な場合は、商品に隠れた不具合(欠陥、不具合)があるということになります。これを、今までの民法では、商品に隠れた瑕疵(かし)があるという表現がされ、売り手の瑕疵担保責任だとされてきました。
これが、令和2年4月1日に始まった改正民法のルールでは、「契約の内容に適合しない(契約不適合)」という表現に改められ、隠れた瑕疵に限らず、商品の種類、品質、数量に不具合があれば契約不適合となります。売り手には契約に適合した商品を買い手に引き渡す義務があります。これを売り手の担保責任といい、この義務を果たさないと約束を守らなかったという意味で、債務不履行とされます。
また、この債務不履行の判断時期についても、契約締結時までとされてきた瑕疵担保責任の判断時期が、契約不適合の担保責任の場合は、買い手に渡される時までとなりました。ただ、これまでも多くの運営会社は、利用規約で引き渡しの時と規定しているようですから、大きな変更はないかも知れません。
契約不適合の場合、買い手は売り手に対して、古い民法のように解除(最初からなかったことにする)、場合によっては損害賠償(被害に対する賠償)を求めることに加え、これからは追完請求(補修したり、代わりの物にしたり、数量を足したり)や、代金減額請求という方法が加わりました。
商品が契約不適合であることを知らずに、売り手が売買契約を締結したり、契約締結後引き渡しまでに不適合となった商品が買い手に届けられた場合に、改正民法では、買い手がそれに気が付けば、売り手に対してその商品を補って、契約通りの完全な商品として引き渡してほしいという追完請求をすることができます。
その実際の方法としては、届いた商品がひとつ前のバージョンだから、契約した商品を届けてほしい、壊れているので修理や補修をしてほしい、代わりの商品にしてもらいたい、数量に不足があるのでその分を追加してほしいというものです。ただ、買い手に必要以上の負担がないのであれば、売り手は買い手が請求した方法とは違う方法で追完して納得してもらうこともできます。
つぎの方法として、代金減額請求という、いわゆる値引きによる対応があります。また、履行の追完を通知され、その期間内に売り手が追完しない場合、簡単に修復できる場合を除いて、買い手から契約の解除を通告され、最初からなかったことにされることがあります。契約自体が最初からなかったのですから、不完全な商品が戻ることとなり、代金は買い手に返却しければなりません。
先ほど触れたとおり、古い民法では売り手に瑕疵担保責任がありましたから、売り手に故意(わざと)または過失(不注意で)があって、不完全な商品が引き渡された場合には、売り手の完全な商品を引き渡すという義務違反、つまり売り手の債務不履行として扱われてきました。
改正民法では、買い手が商品を受け取った時に、契約不適合であれば、買い手に責任がある場合を除いて、すべて売り手の債務不履行となります。ですから、不適合に気付いた買い手から、追完するよう請求されたり、代金減額の請求をされたり、または契約解除を通告されることがあります。
改正民法では、不適合の原因が売り手になければ、損害賠償の責任を追及されることはなくなりました。
ただ、もし売り手が、契約不適合の商品だということを初めから知っていたり、不適合なことを隠して売った場合、また、売り手としてそのことを知らなければならなかったのに、見落として買い手に商品が渡った場合など、その責任が売り手にあるとなれば、契約の解除や損害賠償を請求されることになります。
また、不適合であることを知っていて出品することが、利用規約に抵触すれば、出品者の評価に影響するでしょうし、運営会社からのペナルティーや、悪質な場合には詐欺(初めからだますつもりだったの)ではないかという疑いさえ発生するかもしれません。犯罪の疑いありということになりかねません。
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